南シナ海紛糾 膨張中国に自制を求めたい(6月10日付・読売社説)
南シナ海の領有権と海洋権益を巡り、中国と東南アジア諸国との確執が深まっている。中国側に自制を求めたい。
ベトナムの石油探査船が5月下旬、同国中部沖合の南シナ海で、中国の監視船によって、探査用ケーブルを切断された。
ベトナム政府は、現場は同国の排他的経済水域(EEZ)内であるとして、中国に抗議するとともに、損害賠償を求めた。
中国政府は、問題の海域について、「主権と管轄権を有する」と反論したが、一方的な実力行使は許されるものではない。
同じ時期、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島では、フィリピンが領有権を主張する岩礁に、中国側が鉄柱やブイを設置した。
2002年に中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が署名した「南シナ海行動宣言」では、新たな建造物などの建設は控える、としている。中国の今回の行動はこれに反するものだ。
中国の梁光烈国防相は今週、シンガポールでのアジア安全保障会議で演説し、「中国は南シナ海の平和維持に尽力しており、情勢は安定している」と語った。
ベトナムとフィリピンの国防相が、直ちに反論したのは当然だろう。言行不一致の対応では、国際社会からの信頼は得られまい。
海洋権益を巡り、中国が実力行使に出る背景には、今年から2015年までの5か年計画で、海洋権益の保護と拡大を重視する方針を掲げていることがある。
南シナ海が中国の“内海”になるのを阻むには、ASEANが一致団結することが肝要だ。
ASEANは5月初めの首脳会議で、南シナ海での紛争を話し合いで解決することを規定した「行動宣言」を、法的拘束力を伴う「行動規範」へ格上げするため、協議開始を決めた。
中国も「行動規範」の協議に応じるべきである。
南シナ海は日本に原油を運ぶ船舶が航行する要路、シーレーン(海上交通路)が通る海域だ。
ゲーツ米国防長官は先の安保会議で、南シナ海の自由航行権などを守るために、米国が軍事的関与を続けて行くと表明した。
利害を共有する日本も、米国と連携し、ASEAN諸国への支援をさらに強化する必要がある。
(2011年6月10日01時12分 読売新聞)
南シナ海を「西フィリピン海」…中国に抗議の意
【バンコク=深沢淳一】フィリピン政府は、中国と領有権問題で対立している南シナ海の名称を「西フィリピン海」に変更した。
フィリピンは最近、中国が南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で新たに資源探査の準備を進め、フィリピン漁船の活動も妨害しているとして、中国へ の反発を強めている。名称変更により、領有権を強調し、中国に抗議の意思を示す狙いだ。ベトナムも南シナ海を「東海」と名付けている。
(2011年6月14日19時34分 読売新聞)
中国「南シナ海は国際社会で通用している」
【北京=大木聖馬】中国外務省の洪磊・副報道局長は14日の定例記者会見で、ベトナムが南シナ海で軍事演習を実施したことについて、「関係国が地域の平和と安定に有利となることをすることを希望する」と述べ、ベトナムを暗に批判した。
一方、フィリピンが南シナ海の名称を「西フィリピン海」に変更したことについて、「『南シナ海』は国際社会で通用している名だ」と述べた。
(2011年6月15日00時30分 読売新聞)
中国が南シナ海で軍事演習、ベトナムけん制か
【北京=大木聖馬】中国共産党機関紙・人民日報系列の国際問題専門紙「環球時報」(電子版)は17日、中国海軍が最近、南シナ海で軍事演習を実施したと報じた。
報道によると、海軍は中国・海南島付近の南シナ海で、国家海洋局や国境警備隊などと合同で計14隻の駆逐艦、巡視船や2機の作戦機を出動させ、対潜水艦パトロール訓練や上陸訓練などを行った。報道は、演習実施の具体的な時期については明らかにしていない。
(2011年6月17日21時05分 読売新聞)
海洋安全保障 中国けん制へ国際連携図れ(6月20日付・読売社説)
中国の著しい海洋進出で、急速に変わりつつあるアジアの安全保障環境に、日本は適切に対処していく必要がある。
菅首相とインドネシアのユドヨノ大統領が17日、東京で会談し、マラッカ海峡や南シナ海などにおける海賊対策や安全保障の問題での協力を一層強めていくことで一致した。
こうした海域は、中東と北東アジアを結ぶ海上交通路(シーレーン)であり、貿易立国の日本にとっては極めて重要である。
両国は、津波などに備える防災協力や、地球温暖化問題への対応、外相、防衛相、経済産業相ら閣僚による各協議の定例化についても合意した。
東南アジア諸国連合(ASEAN)の中核を占めるインドネシアと日本が、対話を重ね、地域の安定化に向けて協力できるようになれば、意義は大きい。
両首脳が戦略的関係の強化を図るのは、「海洋大国」を目指す中国に共同で対処する必要があるとの判断からだ。
中国は、南シナ海の領有権や海洋権益を巡り、ベトナムやフィリピンなどとのトラブルが絶えない。武力による威嚇も辞さない構えの中国の姿勢に対し、ASEAN各国は不安感を強めている。
こうした中国の動きに対して、ASEANは、南シナ海での紛争を話し合いで解決するとした「行動宣言」を、法的拘束力を伴う「行動規範」に格上げすることを目指している。中国はこの協議に前向きに応じる必要があろう。
懸念されるのは、日本近海でも最近、中国海軍が活動を活発化させていることである。
中国海軍の駆逐艦など11隻が6月上旬、沖縄本島と先島諸島の間を通り抜け、フィリピン東方沖の西太平洋で演習を実施している。遠洋での演習は、年々規模も内容も拡充されている。
中国海軍の増強は、東シナ海で尖閣諸島やガス田問題を巡って、中国と対立する日本にとっても看過できない。
日本政府は、インドネシアと同様に、対中警戒感を強める他のアジア諸国とも、重層的で幅広い対話の枠組みを構築していかなければならない。米国との同盟を深化させることも、中国へのけん制となるはずだ。
7月のASEAN地域フォーラム(ARF)や、秋の東アジア首脳会議(EAS)などの機会を積極的に利用すべきだろう。各国が連携して、中国に自制を促せるよう知恵を絞る必要がある。
(2011年6月20日00時59分 読売新聞)
Không có nhận xét nào:
Đăng nhận xét